shoe gaze

日々、影の濃度は増していく。ヘッドフォンをつけてサンダルとペディキュアを見つめながら歩いていたからふと顔をあげたときそこにいたその人を見て蜃気楼かと思いまばたきの次の瞬間には消えてしまいそうなその人はこちらをちらりとも見ず通り過ぎるのだけれどそれはその人も自分の足元を見つめながら歩く種類の人間だからで私は特に落胆などしない。ドッペルゲンガーについて考察するとき、私は必ずその人のことを思い出して、自分のドッペルゲンガーに会ったなら数日以内に死ぬ筈だと、その時をおとなしく待つことにする。足音、バスドラム、影のコントラスト、死に絶えた風、8分の6拍子、日差しの強さ。夏が来る。そしていつものようにまたすぐ終わる。