一本だけ足を失った驢馬は自分の体重を三本の足では支えきれずに乾いた砂の上に座り込む。座り込んでしまった所為で足を失ったことに他の人たちは全く気付かず、怠け者と罵った。しかし驢馬は反論するために立ち上がることも怠惰ではないことを行動で示すことも出来なかった。他の人たちはただ罵るだけで驢馬に対して何一つしてやらなかった。言葉の暴力性と無反省さという特性を充分に理解していたからだ。花の咲かない砂漠に溜息のような鳴き声だけが響いて、それがゆっくりとこだまするのを当の驢馬だけが聞いている。