A girl in the twilight

ホットミルクにラム酒を少しだけたらしてシナモンスティックでそれをかき混ぜる、という飲み物が入ったマグカップを両方の手のひらで包み込んで、その熱が徐々に自分の体内にも伝わっていくことを感じながら、日が暮れるのを待った。マグカップは陶器で白くてつやつやしている。窓の外の家路へと散り散りになる子供たちの声が、わたしの部屋の中までかけめぐって耳をかすめていく。わたしの家のすぐ近くには小さな公園があるのだ。(雨の日には大きすぎる水たまりができてしまうような、都会によくありそうな小さな公園だ。)わたしは日が暮れるのを待っていた。(なにか、特別な用事があったわけではない。)街灯がともって虫たちがそのまわりをぐるぐると踊るような、窓を開けていると隣の人の生活の匂いが微かにしてくるような、そういう静寂をわたしは待ち侘びていた。(静寂を「追いかけていた」と言い換えたほうがいいのかもしれない。わたしはそれを、心から欲していた。)わたしは呼吸する。大事な人の言葉を反芻しながら。見えないところに突き刺さったままの棘を感じながら。乾いて掠れた声を思い出しながら。ホットミルクを飲みながら。「気持ちが落ち着いたら電話して」という言葉が、耳から離れないままで、永遠に気持ちが落ち着くことなどないように思われた。少しずつ部屋の中に影が増えていく。熱を奪われたミルクが冷たくなっていく。わたしは、日が暮れるのを待っていた。